インタビュー 視覚障害コース長 宮城愛美(みやぎまなび)
先生のご専門は何ですか?
これまで研究テーマはいろいろと変わってきましたが、最近は、美術館や博物館のアクセシビリティ、スマートスピーカーの利活用、アシスティブテクノロジー(支援技術)の利用、視覚障害者の読書などについて、学内の先生方や、学外の研究所、企業の方と共同研究をしています。あまり一貫性がない研究テーマかもしれませんが、いずれも、視覚障害者の情報アクセスに関連した内容ですので、筑波技術大学の学生さんの協力なくしては進められない内容です。日頃から、授業でも、これらの研究テーマの内容について、学生さん達と議論をさせてもらっています。
新学部ではどのような授業を担当するのですか?
メインで担当するのは、視覚障害コース対象の1年「情報アクセシビリティ」「情報アクセシビリティ演習」、3年「障害者サポート技法」、3年「ヒューマンインタフェース」です。
また、視覚障害コース対象の「視覚障害学概論」「障害補償演習1」「障害補償演習2」「アクセシブルドキュメント」や、視覚・聴覚コース合同の「盲ろう者の理解と支援」「共生社会創成プロジェクト実習C」「共生社会創成特別研究1」も担当します。
「情報アクセシビリティ」は、情報アクセシビリティの変遷や現状を多面的に学び、視覚障害者を含む様々な人々の情報アクセシビリティを向上させるための、アクセス支援技術の研究開発と普及の動向を総合的に知るための授業です。講義では、解説書、研究論文、ガイドラインを資料として、議論を通して理解を深めます。
「情報アクセシビリティ演習」は、講義と並行しながら、情報アクセスに関する技術の活用方法や、現状分析と課題の発見、方策を体験的に学びます。個々やグループで、アクセシビリティ調査、メディア変換、文字サイズ評価に取り組み、発表を行います。
「ヒューマンインタフェース」では、人間と道具・機械の接点であり、道具・機械の使いやすさに大きく影響するヒューマンインタフェースについて、教科書を読み進めながら学修します。原則や理論、ガイドライン、評価方法、関連技術について、解説や議論、試行を通して学びます。学期の最後には、グループで実際の製品のユーザビリティテストを行い、ヒューマンインタフェースの課題抽出の手法を体験します。
共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします
私の学生時代、機械の操作が苦手な母がビデオ録画に苦戦していたことが、ヒューマンインタフェース(人と機械の接点に関する研究分野)に関心を持ったきっかけです。人の生活を便利にするはずの「技術」なのに誰でも使えるわけではない、ということにもどかしさを感じました。折しも、D.ノーマンの書籍「誰のためのデザイン?」が話題になった頃で、私は機械の操作のわかりづらさを追究するために、卒業研究では、操作パネルのシミュレーターを作ってユーザビリティ分析を行いました。それから時代が移り変わって、機械に苦手意識を持っていた母は高齢者になりましたが、今ではスマホを使いこなしLINEやFacebookを楽しく利用しています。母の能力が向上したというよりは(恐らく…)、「技術」がより多くの人に対応するようになった結果でした。
これまでの歴史を振り返ると、恐らくこれからも、ただ待っていれば、「社会」や「技術」はよりよく改善されていくのかもしれません。ですが、共生社会創成学部では、社会の変化を傍観するのではなく、社会の変化に参加したいという方に来ていただきたいです。最初は、私がそうだったように、学生の皆さんも、自分や周りの人のちょっとした不便に注目することから始まるのかもしれません。そこから、大学での学修を通して、段々と、様々な視点を知って、より多くの人のことを考え、いずれは「人」と「社会」や「技術」の接点となって、よりよく社会を変えていくことを期待しています。