インタビュー 三好茂樹(みよししげき)

先生のご専門は何ですか?

補聴器に似た装置で、脳に音を伝える神経に電気を使って音を聞こえるようにする装置があります。人工内耳と言います。この装置でより鮮明に会話相手の音声を聞こえるようにする方法に関する研究を昔、私は大学院生の時に行っていました。これも聴覚障害者へのより良い情報保障を目的とした研究の一部です。
現在は補聴器や人工内耳の技術的な進展や利用者も増えていますが、それでも聴覚のみに頼りながら会話したり、授業中に先生の声を正確に聞き取れない方も多くいます。そのような学生さん方へ、視覚を使った情報保障、主にリアルタイムでの字幕表示について、その字幕作成手法やシステムの開発・研究を現在の活動の中心にしています。聴覚に障害のある方々の聞こえ方は様々で、また、スポーツの授業や教室内での実習など、情報保障手段に向き不向きがあります。20年以上前から音声認識技術を取り入れた情報保障についても研究してきました。現在ではAI技術の一部になっていますね。このような最新技術を上手く使いこなす方法や、従来からのキーボードで字幕を入力する方法をより良く学習できるような研究活動をしています。
また、本学以外にも他大学で学んでいる聴覚障害学生さんが、たくさんいらっしゃいます。得られた研究成果は、その学生さん方への支援としても、本学が事務局を担当する聴覚障害学生支援のためのネットワークである「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)」や、本学内の「教育共同利用拠点」という学外支援組織を介して、開発システムの提供や技術的な相談支援へと繋げています。
このような学生さんを個々の大学で支援してきた学生さん方(支援学生さん)が、大学院情報アクセシビリティ専攻に入学し、支援技術の更なる向上を目指して、使う側から作る側へと研究活動を行う例もございます。

新学部ではどのような授業を担当するのですか?

「プログラミング応用」を主として、情報保障技術関連の授業も担当予定です。

この授業では、情報保障に関する知識やプログラミングに関する基礎知識をベースとして、具体的なコミュニケーションツールを開発し、その実体験を通して、グループワークとして評価も行っていきます。
部分的に情報保障に関連する知識や実例を紹介しながら進めます。
卒業後に、合理的配慮の具体的な手段として、最新の技術を活用するための基礎技能を体験していただければと思います。

共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします

4年間の学生生活の中で、障害と社会の仕組みの学修を基軸としながらも、合理的配慮に関する問題解決の具体的な手段についても目を向けて頂き、情報アクセシビリティとしての工学的な手段も含め、より多くの手段、知識、そしてノウハウを持って社会で活躍して頂きたいと思います。
より良い建設的な対話の解決策の一助となっていくはずです。

三好先生授業風景。口元が見えるマスクをして講義している。