インタビュー 青木千帆子(あおきちほこ)

先生のご専門は何ですか?

私の専門分野は障害学といいます。障害が社会的に構築されるものであるとする「障害の社会モデル」の観点から、社会を分析する学問です。

研究テーマは、情報アクセシビリティです。いろんな人が、日常生活において当たり前の情報を当たり前に入手できるようにするためには、どんな社会の在り方が考えられるのかという点について研究しています。具体的には、学校の教材、職場環境、緊急時の対応等、様々な文脈における情報アクセシビリティについて研究しています。

新学部ではどのような授業を担当するのですか?

「障害社会学」(1年2学期)、「ダイバーシティの理解」(2年1学期)、「教育とダイバーシティ」(2年2学期)、「社会福祉学」(3年1学期)、「共生社会創成プロジェクト実習B」(3年夏季集中)等を担当します。ほとんどが共同実施科目です。

「障害社会学」は、共生社会創成学部で頻出するキーワードについて学ぶ授業です。具体的には、障害者の権利に関する条約において示されている「障害の社会モデル」の考え方、そして人権について理解することを目標とします。また、「ダイバーシティ」の概念についても学びます。障害や社会に関する幅広い捉え方について学習するのと同時に、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを基盤とした社会のあり方について議論を深めます。

「教育とダイバーシティ」では、初等中等教育における特別支援教育、高等教育における障害学生支援について学びます。そして、ジェンダーや国籍、民族、障害など、さまざまな背景を持つ人々の教育的ニーズを理解し、その人の可能性を引き出すための指導や支援の方法に関する知識を習得します。また、こうした学びを実現するための教育のあり方に関する議論も深めます。

「社会福祉学」では、障害者の社会参加を支援する際に必要となる、社会福祉に関する知識と技術に焦点を絞って取り上げ、理解を深めます。共生社会を形成するためには、社会福祉の果たす役割をきちんと理解しておくことが重要になります。「障害社会学」等で学習する人権に関する知識や、「共生社会プロジェクト実習」を通し学習する社会の動向と結び付けながら、社会福祉サービスの在り方や、役割に関する理解を深めます。

共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします

私は障害学の観点から、情報アクセシビリティについて研究しています。このような研究に関する国際会議に参加すると、情報アクセシビリティの専門家として活躍している障害者に出会います。その人たちはアシスティブテクノロジースペシャリスト等と名乗っていて、障害者が社会で活躍するために必要な整備や工夫について、とても分かりやすく発信しています。その人たちの話を聞く度に、「こんな人が日本にもいてくれたらな…」と思っていました。

共生社会創成学部は、まさにそのような人材を育成する学部です。今まで違和感を感じることや、どうせ変わらないだろうと諦めてきたことが、たくさんあると思います。考えないようにすることが多いかもしれませんが、共生社会創成学部では、それを言葉にしていきます。そしてその言葉を鍛え、社会を切り開く道具へと作り替えていきます。それは簡単なことではありませんし、既存の学問分野に当てはまらないので、受験に際しては迷う部分があるかもしれません。しかし、世界に目を向けてみると、このような知識を武器に、活躍している障害者がたくさんいます。日本でも、そのような知識を有する人材の必要性が認識されてきていることが、様々な調査で示されています。

道は平たんではありませんが、一緒に共生社会を作っていきましょう。チャレンジ精神のある方を歓迎します。

ワークショップの様子。「障害とは?」という問いに対する人々の答えが書き込まれた紙が全面に貼りだされている。