インタビュー 金堀利洋(かなほりとしひろ)

先生のご専門は何ですか?

私の研究は、視覚障害のある方々の学習を支援するため、紙の資料を読みやすい形に変換する方法の開発です。教科書を点字や音声で読めるようにしたり、文字を拡大したりする技術を研究しています。特に力を入れているのは数式の変換です。数式は複雑な構造を持つため、通常の文字よりも変換が難しいのですが、コンピューターを使って数式の構造を詳細に分析し、AIの技術も活用することで、より正確で迅速な変換方法を研究しています。この研究を通じて、視覚障害のある方々が他の学生と同様に学習できる環境の構築を目指しています。

新学部ではどのような授業を担当するのですか?

新学部では、主に以下の授業を担当します。

  1. 情報基礎1:この授業では、大学生活に不可欠なパソコンの基本的な使用方法を学びます。Windowsの操作方法から始め、メールの送受信やインターネットの使用方法まで幅広く学習します。特に力を入れるのは、Excelという表計算ソフトの使用方法です。基本的な表の作成から始まり、データの並べ替えや集計、グラフ作成まで学びます。また、タイピング練習も重視しており、キーボードを効率的に操作できるようになることを目指します。この授業で身につけるスキルは、レポート作成やデータ分析など、大学生活全般で活用できます。
  2. アクセシブルドキュメント:この授業では、誰もが読みやすく理解しやすい文書の作成方法を学びます。特に、視覚障害のある方や読み上げソフトを使用する方にも分かりやすい文書作成のテクニックを身につけます。例えば、適切な見出しの付け方、画像への説明文の追加方法、文書構造の明確化技術などを学びます。WordやPDFなど、様々な形式の文書を扱い、それぞれの特性に合わせたアクセシビリティの確保方法を実践的に学習します。この授業を通じて、誰もが情報にアクセスできる社会づくりに貢献する能力を養成します。
  3. アクセシブルモデリング:この授業では、3Dプリンター技術を用いて、誰もが理解しやすい立体模型を作成する方法を学びます。特に、視覚障害のある方が触って情報を得られるような模型作りに挑戦します。3Dモデリングソフトウェアの基本操作から始め、実際に3Dプリンターで出力するまでの過程を学習します。授業の後半では、各自でプロジェクトを計画し、オリジナルの3Dモデルを制作します。この授業を通じて、ものづくりの技術だけでなく、ユニバーサルデザインの考え方や、障害の有無に関わらず情報を共有する方法について深く学ぶことができます。

共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします

新設される共生社会創成学部は、現在の社会ニーズに応えるだけでなく、新しい世界を創造していく人材を育成する新たな試みです。特に、視覚障害のある方がITを活用して社会で活躍できるよう、専門的な知識とスキルの習得を目指します。

本学部が目指すのは、より良い社会の構築です。そのためには、急速に発展するIT技術だけでなく、その技術と人との接点、つまりインターフェースについて深く考察できる人材が必要です。例えば、誰もが使いやすいスマートフォンアプリの開発には、文字サイズや色彩、音声ガイドなど、様々な工夫が求められます。このような「ユニバーサルデザイン」を考案することが、私たちの重要な役割です。

本学部では、学生の皆さんが自身の経験を活かしながら、新しい技術やアイデアを生み出していくことを期待しています。視覚障害の経験は、むしろ新しい発想を生み出す源泉となり得ます。

社会は多様性に満ちています。その中で、一人ひとりが自分らしく生きられる世界を作るのは、他でもない皆さん自身です。ITを活用して、誰もが暮らしやすい社会を共に創造していきませんか。

好奇心旺盛で、新しいことに挑戦したい方、人の役に立ちたいという思いを持っている方を心から歓迎します。共に新しい世界を創造する挑戦に参加しましょう。