インタビュー 田中仁(たなかひとし)

先生のご専門は何ですか?

私は見えない数学者です。実は割とちゃんとした数学者で、2024年度(第23回)日本数学会解析学賞を受賞しました。

  • 業績題目:直積型分数冪積分作用素の重み付きノルム不等式や掛谷問題に関連する最大作用素などの実解析学的研究
  • 英文題目:Harmonic analysis on weighted norm inequalities for product fractional integral operators and intensive research related to the Kakeya problem

新学部ではどのような授業を担当するのですか?

「社会統計学1・2」(一人で担当します。)、「視覚障害当事者研究1・2・3」(松尾政輝さんと青木千帆子さんとで担当します。)

「視覚障害当事者研究」、この授業は共に学び研究します。オープンキャンパスで開催した模擬授業の記事をぜひ読んでみてください。

オープンキャンパス「視覚障害者当事者研究」模擬授業の様子

共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします

「視覚障害当事者研究」を担当するので、少しは哲学の勉強をしてみようと思っています。サピエの点字図書からウィトゲンシュタイン著 野矢茂樹訳の「論理哲学論考」をダウンロードして読んでみました。読んでみましたが分かった気にはなりませんでした。しかし「怪しい光を放っていること」だけは分かりました。

なぜか本文ではなく、野矢茂樹先生の「訳者解説」から、私が感動した部分を以下に示して、皆さんへのメッセージとさせていただきます。

私の世界は「生きる意志」に満たされねばならない。事実を経験し、そこから様々な思考へと飛躍して行くだけでなく、その世界を積極的に引き受けて行こうとする、その意志である。

どのような世界であれ、生きる意志に満たされ得る。そしてどのような世界であれ、生きる意志を失い得る。

前者が幸福な生であり、後者が不幸な生に他ならない。

こうして、論理という表の顔に導かれながら論述を進めてきた『論考』は、その最終段階において、「幸福に生きよ!」(『草稿1914–1916』1916年7月8日)という声を響かせるのである。

田中仁先生授業風景