インタビュー 嶋俊樹(しまとしき)
先生のご専門は何ですか?
専門は視覚障害児教育に関わる領域です。視覚特別支援学校(盲学校)で視覚障害教育に携ってきた経験から、視覚障害者にとって言葉の理解を深めることや移動の困難を解消することは重要なテーマであると考えます。さらに、地図帳の編集に関わる経験を通して、地理的空間を認知する際には地名などの地理的知識も重要です。そこで、視覚障害者は、私たちが生活する上で重要な情報でもある地理的知識をどのように習得するのかを明らかにすることが研究のスタート地点となりました。現在は小学生や大学生を対象に実態調査を進めていますが、将来的には研究の成果が視覚障害に配慮した教育方法の開発につながることを願っています。
新学部ではどのような授業を担当するのですか?
「教育とダイバーシティ」は盲学校教員経験が大きく関わる授業の一つでもあります。この授業は視覚・聴覚系共同実施科目です。授業では、特別支援教育やジェンダーや国籍、障害などに関する基本的な内容を学びますが、ただ知識を習得するだけでなく、みなさん自身の経験を踏まえ、学習上又は生活上の困難に直面している児童・生徒の支援について一緒に考えていきます。教育的ニーズのある児童の中には、まわりから気づかれずに困難さの中で日常生活を送っている可能性があります。多様な児童・生徒の実態を把握したり様々な背景についても想像したりしながら支援につなげていくことが必要だと思います。そのためには、受講生同士の相互のニーズについて話し合ったり様々なケースについて議論したりする時間を大切にしたいと考えます。
共生社会創成学部の受験を考えている学生へのメッセージをお願いします
筑波技術大学は視覚、聴覚に障害を有する学生のために設立された日本で唯一の大学です。新しい学部の設置に向けた本学の取組は、まさに共生社会創成の実現に向けた大きなプロジェクトでもあります。少子高齢化が進む現代社会において、多様な価値観や背景を持つ個人が、一人ひとりの強みをいかして社会に参加することは大変意義深いことです。
まず、みなさんご自身のことについて、様々な角度から見つめなおしてみてください。本学は環境面において視覚障害、聴覚障害に対する配慮され整備されています。しかし、卒業後の社会に出たときには、自分のことを客観的に他者に伝えることをが求められます。みなさんの力は共生社会を創成するために必要ですので、自分の力を高めるための目的意識を持つことが大切です。
次に、大学生活を通して、受験生のみなさん自身が経験したことがないこと、さらに今まで誰もやろうとしなかったことへチャレンジするきっかけを見つけ行動につなげてほしいです。「見たり聞いたりしたことがないもの」「行ったことがない場所」「経験したことがないスポーツ」「いまだ誰も挑戦したことがないプロジェクト」など、10年前の自分が想像できなかったことに取り組みがら様々な体験を重ねてほしいと思います。
最後に、大学で出会う仲間と一緒に未来のさまざまな状況を考えてみてください。みなさんが卒業する時の社会情勢や、10年、20年後の世界を誰も預言することはできませんが、想像することはできます。共生社会を創成する際には想定外の事象について考える必要があるかもしれません。本学での大学生活の中で、一人ひとりが想像するのはもちろんですが、未来の仲間とともに未来について考え続けてほしいと思います。
