障害者をとりまく制度や社会意識は、ダイバーシティ&インクルージョンに向けて変化してきました。しかし、社会的障壁を解消するために必要な、環境整備や合理的配慮を進めるための具体的な方法に関する理解が、社会、障害者、双方において不足しているのが現実です。
視覚障害者・聴覚障害者のための大学である本学としては、この状況を解決するために、次の要素を補うことが必要だと考えています。
100%の情報を受け取る経験
社会には情報格差があり、情報の取得や利用に社会的障壁がある障害者が100%の情報を受け取ることができる機会は希少です。
しかし、100%の情報を受け取り、自由に発信できる経験なしに、必要な環境整備や合理的配慮が何かを知ることも、難しいでしょう。
このため、100%の情報を受け取りながら、社会の変化に対応するための情報保障の在り方に関する議論を進める必要があります。
多様性の理解とエンパワメント
本学の卒業生を対象に実施した調査からは、社会的障壁の解消を図るためには、コミュニケーション能力、交渉に自ら乗り出すために十分なエンパワメント、そして自分が社会に参加し能力を発揮するために、周囲の対応を求めることができると知っていること(セルフアドボカシー)が必要であることが読み取れます。
一方、権利擁護の観点が自分のことだけに限られていては、ダイバーシティ&インクルージョンにつながりません。共生社会を創成するためには、多様性を理解していることが不可欠です。
そこで共生社会創成学部では、障害者の視点から共生社会の創成に取り組む人材を育成します。そのために、次のような力を身に付けることができる教育を提供します。
1多面的かつ総合的な思考力
異なる価値観の人々や多様な専門分野の人々と連携して職務を遂行するために必要な幅広い教養と、データを分析し意味を見出す論理的な思考力。
2情報アクセシビリティに関する
知識と課題の分析力
多様な人々が情報を利活用する方法に関する知識に加え、自らの専門性の基盤としてのICTに関する知識と技術。
3障害と社会の仕組みに関する
知識と課題の分析力
多様なマイノリティと社会の仕組みに関する知識を身に付け、社会の状況と課題を多面的・客観的にとらえる力。
4人権に関する知識に基づき
共生社会を希い探究する力
人権に関する知識を身に付け、エンパワメントのプロセスを経験した上で、格差解消に向けた方途を論理的に探究し構想する力。
5共生社会創成に向けた知識の応用と
環境にアプローチする力
多様な人々の間の調整を図り、人と環境に働きかけることで共生社会を創成していくための環境を整備するコーディネート力及び発信力。
以上のような知識や能力を身に付けた方に対し、「情報保障学」の学位を授与します。
情報保障学とは
情報は人の生涯にわたり、また、学校、家庭、地域、職場など、人が生活するあらゆる場所で必要とされます。しかし、情報へのアクセスには格差があります。障害者をはじめとする多様な存在が、平等に情報にアクセスできるようにするためには、情報へのアクセスを阻害する要因を生み出す社会構造に関する理解と、その要因にアプローチする力が必要になります。
共生社会創成学部は、情報保障に資する情報科学、障害社会学の知見を体系的に修得し、多様な人々の社会参加を目指す実践について学ぶ学部です。このような学びを情報保障学と呼んでいます。