文部科学省令和6年度読書バリアフリーコンソーシアム事業「読書の際に使用する機器の貸出に関する実態調査」
目次
最終更新日:2025年3月7日
目的
2019年読書バリアフリー法成立以後、読書環境の整備が読書環境の整備が進んでいる。しかし、これらの整備はITリテラシーを有することを前提として進む一方、読みづらさを抱える方の機器の活用に関する支援は手薄である。また、昨年度当事業で行ったアンケート調査(図書館の障害者サービス用ICT機器利用支援に関するアンケート調査)では、多くの図書館では読書の際に使用する機器を保有しながらも、それを有効活用するためのリソースが確保されていないことが明らかになった。
そこで今年度のアンケート調査では、読書の際に使用する機器の貸与に関する実態を明らかにし、読みづらさを抱える方が気軽に機器を手に取り、多様な読書方法にチャレンジすることができる環境に向けた情報の整理を行う。
調査時期
2024年9月~10月
調査対象
支援団体、開発事業者あわせて合計1,895箇所
内訳
- 支援団体 1,836箇所 以下、協力依頼時の内訳
- 難病相談支援センター 68
- ロービジョンケアを実施している病院 502
- ICTサポートセンター 50
- 図書館(R5調査で機器貸出を行っていると回答した図書館) 81
- 介護・実習普及センター 32
- 障害者リハビリテーションセンター 28
- (一般社団法人)日本福祉用具供給協会に登録している事業者 1,070
令和5年度読書バリアフリーコンソーシアム事業 図書館の障害者サービス用ICT機器利用支援に関するアンケート調査にて機器貸与を行っていると回答した図書館、および「都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧」「令和5年度ICTサポートセンター等の設置状況」「厚労省 補装具装用訓練等支援事業」「神経難病対策に取り組んでいる病院」「ロービジョン対応医療機関リスト」に連絡先を公開している機関
- 開発事業者 59箇所
「日本障害者コミュニケーション支援協会参加企業」、「サイトワールド出展者」に連絡先を公開している機関
方法
協力依頼を郵送し、回収はGoogleFormsを用いたオンラインでのウェブアンケートを用いた。回収は一部メールにて対応した。
なお、本調査における貸出は、各組織の備品を外部に持ち出す際の手続きとした。
回収率
全体 94箇所(回収率4.96%、内訳は回答内容に基づくもの)
- 図書館 51件(福祉用具取扱事業者との重複 1件、その他との重複 1件)
- 医療機関 22件
- 障害者ITサポートセンター 7件(介護・実習普及センターとの重複 1件)
- 介護・実習普及センター 1件(障害者ITサポートセンターとの重複 1件)
- 福祉用具取扱事業者 15件(図書館との重複1件)
- その他 2件(図書館との重複 2件)
- 内訳
- 社会福祉協議会 1件
- 障害者福祉協会 1件
- 内訳
アンケート内容 (詳細は付録参照)
- 読書支援機器の所有と貸出状況
- 読書支援機器をそろえるきっかけ(支援団体のみ)
- 開発・販売機器の貸出を行っていない理由(開発事業者のみ)
- 読書支援機器の貸出を行っていない理由(支援団体のみ)
- 読書支援機器の貸出条件
- 読書支援機器の貸出期間
- 読書支援機器貸出の際の利用者負担
- 読書支援機器の貸出在庫管理(支援団体のみ)
- 貸出機器が返却されてきた際の業務
- 読書支援機器の貸出機器の貸与中の破損・紛失への対応
- 貸出に関する説明書類の有無
結果
(1)読書支援機器の所有と貸出状況
読書支援機器別の所有と貸出状況について尋ねた結果を表1.に示す。(n=94)
所有している機器として、「拡大読書器」が62件(66.0%)と最も多かった。次いで、「デイジー機器」が54件(57.4%)、「パソコン」が46件(48.9%)であった。
貸出をおこなっている機器として、「デイジー機器」が45件(47.9%)と最も多かった。次いで、「拡大読書器」が13件(13.8%)であった。
設定・操作説明を個別に行っている機器として、「デイジー機器」が43件(45.7%)と最も多かった。次いで、「拡大読書器」が37件(39.4%)、「パソコン」が28件(29.8%)、「音声読書器」が26件(27.7%)、「スマートフォン」が24件(25.5%)であった。
研修会を行っている機器として、デイジー機器が10件(10.6%)と最も多かった。次いで、「スマートフォン」「音声読書器」がいずれも8件(8.5%)であった。
相談先を紹介している機器として、「デイジー機器」が34件(36.2%)と最も多かった。次いで、「拡大読書器」が28件(29.8%)、「音声読書器」が25件(26.6%)、「スマートフォン」が21件(22.3%)であった。
購入時の給付申請サポートをしている機器として、「拡大読書器」が19件(20.2%)と最も多かった。次いで、「音声読書器」18件(19.1%)、「デイジー機器」17件(18.1%)であった。
その他として、「オーカムマイリーダー」「よむべえ」「天使眼」「センスプレーヤー」と記述があったものについては、「音声読書器」として再分類を行った。「デイジー作成用パソコン」は「パソコン」として再分類を行った。
表1.読書支援機器別の所有と貸出状況
所有している | 貸出を行っている | 設定・操作説明を個別に行っている | 研修会を行っている | 相談先を紹介している | 購入時の給付申請等をサポートしている | |||||||
回答数 | % | 回答数 | % | 回答数 | % | 回答数 | % | 回答数 | % | 回答数 | % | |
デイジー機器 | 54 | (57.4) | 45 | (47.9) | 43 | (45.7) | 10 | (10.6) | 34 | (36.2) | 17 | (18.1) |
スマートフォン | 19 | (20.2) | 1 | (1.1) | 24 | (25.5) | 8 | (8.5) | 21 | (22.3) | 7 | (7.4) |
タブレット | 29 | (30.9) | 8 | (8.5) | 21 | (22.3) | 7 | (7.4) | 19 | (20.2) | 6 | (6.4) |
パソコン | 46 | (48.9) | 3 | (3.2) | 28 | (29.8) | 5 | (5.3) | 16 | (17.0) | 9 | (9.6) |
拡大読書器 | 62 | (66.0) | 13 | (13.8) | 37 | (39.4) | 6 | (6.4) | 28 | (29.8) | 19 | (20.2) |
音声読書機 | 37 | (39.4) | 9 | (9.6) | 26 | (27.7) | 8 | (8.5) | 25 | (26.6) | 18 | (19.1) |
点字ディスプレイ | 24 | (25.5) | 4 | (4.3) | 13 | (13.8) | 4 | (4.3) | 19 | (20.2) | 10 | (10.6) |
点字プリンタ | 30 | (31.9) | 2 | (2.1) | 3 | (3.2) | 1 | (1.1) | 17 | (18.1) | 6 | (6.4) |
スイッチ | 7 | (7.4) | 4 | (4.3) | 6 | (6.4) | 2 | (2.1) | 12 | (12.8) | 6 | (6.4) |
その他 | 15 | (16.0) | 5 | (5.3) | 5 | (5.3) | 2 | (2.1) | 5 | (5.3) | 3 | (3.2) |
その他として回答のあった製品15件の分類は、以下の通り。
- ルーペ 3件(Eschenbachの拡大鏡、ルーペ、拡大鏡)
- 老眼鏡 1件(リーディンググラス)
- リーディングトラッカー 2件(タイポスコープ、リーディングトラッカー)
- 音声コード読み取り装置 2件(テルミー、スピーチオ)
- 意思伝達装置 1件(伝の心)
- ページめくり機 1件(リーダブル)
- パソコンスタンド 1件(パソッテル)
- 電子書籍用端末 1件(eリーダー)
- 電子書籍閲覧ソフト 2件(MyBook・Kindle)
- 録音図書再生機器 1件(MP3プレーヤー)
【まとめ】
- 機器を所有していても、館外貸出に対応していないことが多い。(館内利用に限定しているものと思われる。)
- スマートフォン、タブレット、パソコンは貸し出しはしていないものの操作説明や研修会を実施している組織が多い、(個人所有の場合が多いため?)
(2)読書支援機器をそろえるきっかけ
読書支援機器をそろえるきっかけについて自由記述形式で尋ねた内容を、カテゴリーに再分類した結果を図1.に示す。支援団体のみの調査項目であるため、各パーセンテージは支援団体の回答数(n=87)を母数とした。
「障害者サービス」が21件(24.1%)と最も多かった。次いで、「ロービジョンケア」11件(12.6%)、「法制度の施行」10件(11.5%)であった。回答数は各1件(1.1%)ずつであったが、「各メーカーからの協力」「旧資料の劣化・衰退」「視覚障害者用データ送信サービスの登録」「障害職員の雇用」「他施設で対応が困難」といった回答も見られた。
図1.読書支援機器をそろえるきっかけ
【まとめ】
- 障害者向けサービスの提供をきっかけとしている場合が多い。
- 外部資金や寄贈、メーカーからの協力など、予算確保をきっかけとする場合もある。
- 他施設との兼ね合いで貸出を行っている場合もある。
(3)機器の貸出を行っていない理由
機器の貸出を行っていない理由について自由記述形式で尋ねた内容を、カテゴリーに再分類した結果を図2.に示す。開発事業者については、開発・販売機器、支援団体については読書支援機器について、それぞれ貸出を行っていない理由を尋ねた。(n=94)
結果として、「台数不足」が38件(40.4%)と最も多かった。次いで、「要望なし」が7件(7.4%)、「所有なし」が4件(4.3%)であった。
回答数は各1件(1.1%)ずつであったが、「販売前の使用のみ」「破損紛失を避けるため」「貸出に向かない機器のため」「啓発のみを目的としているため」「閲覧用アカウントがない」「レンタル・販売を目的としているため」といった回答も見られた。
図2.機器の貸出を行っていない理由
【まとめ】
- 複数の利用者に対応できるほどの台数がない場合が最も多い。
- 機器の管理を理由として貸出を行っていない場合もある(人手・保管スペース・破損対応など)。
(4)機器の貸出条件
機器の貸出条件について尋ねた回答を、カテゴリー分類した結果を図3.に示す。各パーセンテージは、1つでも何らかの貸出を行っていると答えた回答数(n=58)を母数とした。
結果として、「サービス利用登録」が39件(41.5%)と最も多かった。次いで、「同じ自治体に居住している」が18件(19.1%)、「障害者手帳を所有している」が15件(16.0%)であった。また、開発事業者の回答は、「条件なし」もしくは「障害者に対する支援や教育を担っている」であった。
図3.機器の貸出条件
【まとめ】
- 各団体の規定に基づき、各組織のサービス利用者として登録していることを条件としている場合が多い。
- 利用者個人だけではなく、支援・教育関係の団体関係者にも貸出登録を行っている場合がある。
(5)支援機器の貸出期間
機器の貸出期間について尋ねた結果を図4.に示す。各パーセンテージは、貸出日数が1日以上であると答えた機関は40件であったが、自由記述の回答を元とした回答数(n=42)を母数とした。
結果として、「1ヶ月まで」が12件(28.6%)と最も多かった。次いで、「1週間以内」が8件(19.0%)、「2週間まで」が5件(11.9%)であった。
「応相談」については、都度相談して決定、機器ごとに調整、手帳の等級により日数を調整などの回答があった。また、貸出相手が個人か団体か、直接貸出か郵送貸出かという条件で貸出期間が異なるとの回答もみられた。
図4.機器の貸出期間
【まとめ】
- 貸出期間は1ヶ月までという条件が約7割。
- 貸出方法や機器によって貸出期間が異なる場合がある。
(6)読書支援機器貸出の際の利用者負担
機器貸出の際の利用者負担について尋ねた結果を図5.に示す。各パーセンテージは、1つでも何らかの貸出を行っていると答えた回答数(n=58)を母数とした。「送料のみ」には、往復送料、片道(返却送料)の回答を含む。
結果として、「利用者負担はない」が45件(77.6%)と最も多かった。
図5.機器貸出の利用者負担
なお、レンタル料の価格設定についての回答は以下の通り。
- 7日間 3,300円
- 1イベントあたり 1,000円/個
- 購入を前提としない場合 1,100円×貸出日数
【まとめ】
- 利用者負担なしに貸出を行っているところが約8割。
- 料金がかかる場合も、送料のみの負担であることが多い。
(7)読書支援機器の貸出在庫管理
読書支援機器の貸出の在庫管理について尋ねた結果を図6.に示す。各パーセンテージは、支援団体のみの調査項目であるため、1つでも何らかの貸出を行っていると答えた回答数(n=53)を母数とした。
結果として、「貸出簿に記入」が23件(43.4%)と最も多かった。次いで、「エクセルに記入して管理」が15件(28.3%)、「図書館システムで管理」が13件(24.5%)であった。
図6.貸出機器の在庫管理
【まとめ】
- アナログな管理が多いが、おおむね何らかの媒体に記録する方法で管理している。
- 紙媒体よりも電子媒体での記録が多い。
(8)貸出機器が返却されてきた際の業務
貸出機器が返却されてきた際の業務について尋ねた結果を図7.に示す。各パーセンテージは、1つでも何らかの貸出を行っていると答えた回答数(n=58)を母数とした。
結果として、「読書支援機器のクリーニング」が35件(60.3%)と最も多かった。次いで、「個人情報の消去」が13件(22.4%)、「動作確認」が11件(19.0%)であった。
図7.機器返却時の業務
【まとめ】
- 機器のクリーニングが最も多い。
- 返却時の業務は、機器の種類によって多岐にわたる。
(9)貸出機器の貸与中の破損・紛失への対応
貸出機器の貸与中の破損・紛失への対応について自由記述形式で尋ね、記述内容を、「弁償」「利用者負担なし」「都度協議」「その他」のカテゴリーに分類した結果を図8.に示す。各パーセンテージは、本項目への回答数(n=56)を母数とした。
「都度協議」は、明らかな故意や過失の有無の確認、団体の長の判断、規定がないため都度検討、という内容であった。
「その他」は、系列の中央図書館の規定に基づく、というものであった。
図8.破損・紛失への対応
【まとめ】
- 明らかな故意や過失の場合は、弁償を求める組織が多い。
(10)貸出に関する文書の有無
貸出に関する文書の有無について尋ねた結果を図9.に示す。各パーセンテージは、1つでも何らかの貸出を行っていると答えた回答数(n=58)を母数とした。
「ない」が37件(63.8%)、「ある」が21件(36.2%)であった。
図9.貸出に関する文書の有無
また、「ある」と回答を得られたうち、文書の提供が6件あった。主な記載項目は下記の通り。
借用規定の掲載項目(図書館)
- 貸出に関する規定の趣旨
- 目的
- 対象
- 機関
- 貸出機器
- 禁止事項:目的外使用、第三者への転貸(IDを含む)、データ保存、設定変更
- 損傷・紛失(弁償・修繕の対応を含む)
- 費用負担の有無:レンタル料・送料・使用時に生じる費用・修理費用
- その他
借用規定の掲載項目(事業者)
- サービス利用規程/規約の趣旨
- 目的
- 対象
- 機関
- 貸出機器
- 禁止事項:第三者への転貸・転売・譲渡、機器の分解・解析・改造・設定変更
- 損傷・紛失(弁償・修繕の対応を含む)
- 費用負担:レンタル料・送料
- その他:個人情報の取扱、身分証明書の確認、免責範囲
借用書の掲載項目
- 貸主情報(団体名・代表者氏名・住所・電話番号・担当者氏名)
- 物品名と数量
- 借用期間
- 借用目的
- 借用者情報(氏名・住所・連絡先)
【まとめ】
- 貸出を行っていても、文書を準備していない組織が多い。
- 文書には、貸出する物品の詳細や費用負担等について明記されている。
参考資料
- 読書の際に使用する機器の貸出に関する実態調査 質問項目一覧
- 読書の際に使用する機器 参考例
- 都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧
- 令和5年度ICTサポートセンター等の設置状況
- 厚労省 補装具装用訓練等支援事業
- 神経難病対策に取り組んでいる病院
- ロービジョン対応医療機関リスト
以上。
読書支援機器の貸出事例に関するインタビューを公表しました
2025年3月7日
以上に報告した「読書の際に使用する機器の貸出に関する実態調査」では、機器を組織外に持ち出せる形で貸し出している組織が少なく、読みづらさのある方が機器を使った読書を気軽に試せる環境が十分に整っていないことが明らかになりました。
そこで、実際に機器の貸出を行っている3つの組織に追加取材を行い、貸与の仕組みについて詳しくうかがいました。
詳しくは、以下のリンクからご覧いただけますので、ぜひご参照ください。